【第８話】悲願　　最高レベル特訓

公開学力テスト前

１１月の第２日曜日、いよいよこの日が来た。

公開学力テストの日だ。

吾郎は「緊張する～」と言いながら、ブロックで遊んでいる。

今さら何をやっても手が付かないだろうと思っているのだろう。

親としては、ぎりぎりまでという思いがあり、「理科覚えよう」と誘い一緒にやってみるも、ふわふわした感じが漂っている。

毎月第２週目はいつも公開学力テストで、毎月の定例行事ではあるが、今月は、先月の公開学力テストが過去最低だったこともあり、このひと月、勉強してきたという自負があるのであろう。

試験は午後からだ。

とりあえず、午前中はゆったりブロック遊びをさせていた。

私は、その間に買い物に行った。

昼ご飯は、「鮎の塩焼き」

吾郎が好きなメニューだ。

前日スーパーに陳列してあったことから今日は、それを目充ててスーパーに買いに行った。

家族４人分１０匹を購入。

後はみそ汁の具材を購入し帰宅。

家に帰り、１０時半ころから早めの昼食支度。

公開学力テストの日は、早め早めに支度をしてしまう。

後で焦りたくないからだ。

買ってきた鮎に塩を振って、グリルで焼く。

吾郎が試験中にお腹を痛めることがないようにと、しっかり焼いた。

そして１1時ころから昼食開始。

吾郎は、「おー、あゆー」と言いながら鮎の頭と内臓部分を除いて、骨まできれいに食べた。

午後１時ころ、いよいよ出発。

試験開始まで、かなり時間があるが、日曜日で渋滞も考えられるので、早めに車で送る。

この日は、吾郎の兄も同乗。

二人でおバカな話をして、バカ笑いしながら、試験へと向かう。

試験会場に着くと、車から降り、吾郎は塾へ。

いつもの鞄を背負って、「行ってきまーす！」と元気よく走って塾の方へ。

「頑張れー」と見送った。

今回の公開学力テストのために立てたサイエンス大作戦の結果はいかに。

公開学力テスト直後

試験が終わるころ、いつもどおり、吾郎を車の中で待つ。

試験終了時間から１０分程度して、吾郎が走って、車に来た。

しかし、近づいて私と目が合うと顔をしかめた。

”良くなかった”と暗に思わせる表情だ。

ただ吾郎は、こんな表情をしながら実は良く出来たというサプライズのいたずらをする子だ。

今回もそれを期待した。

が、そうでもなさそうだ。

車に乗るなり、「あー難しかった」と本気で落ち込んでいる時のテンション。

算数の２枚目の問題用紙の回答をほとんど書いていないと言うのだ。

浜学園の公開学力テストの算数の問題用紙はだいたい２枚で構成されている。

その２枚目をほとんど書いていないというのだから、いいはずがない。

また理科も、予想外のところが出題。

これまでがんばってきた化学も、半分くらいしか解けなかったようだ。

最高レベル特訓の受講資格を取りたかったが、今回もダメか。。。。。

車にいる家族全員が、そのように思った。

またも吾郎のほほに涙が伝った。

帰ってから、X（旧ツイッター）を見て情報を集める。

２枚の問題、全く解答できずという情報もちらほら見たが、通常の難易度だったと言うツイートも多々見る。

結果を見た時の傷を最小限にすべく、結果が発表される水曜日まで落ち込んだ気持ちで過ごした。

ハッピーな結果発表　（最高レベル特訓取得の瞬間）

浜学園の公開学力テストの結果は、水曜日の夜にネットで見ることができる。

そして水曜日の夜。

吾郎は塾でお勉強中だ。

「勝手に見ないで」と言われるが、親として我慢できるはずがない。

という訳でおそるおそる、浜学園のページにネットを繋ぐ。

ページを進めて行き、いざ結果の画面へ。

左手に携帯を持ち、右手で結果発表のボタンをポチる。

私は、次の画面にスマホの画面が移り変わった瞬間、震えた。

「最高レベル特訓　算数　〇」と書かれているのだ！

「おー」と自然と一人きりの歓声が上がった。

算数の偏差値「５７」過去最高を達成した。

先月は過去最低の４０台だったために喜びもひとしおだ。

今回の試験の作戦は、算数単独での最高レベル特訓達成は難しいことから、理科で偏差値を稼ぎ、トータルの成績で算数の最高レベル特訓受講資格を取るというサイエンス大作戦だったが、算数単体でクリアしたのだ。

私自身、算数単体で最高レベル特訓の受講資格をクリアすることは無理だと思っていた。

しかも今回は問題用紙の２枚目を一切解いていないという状況、また理科ができなかったという状況から考えてもなおさらだ。

それが、なんと算数単体で目標としていた受講資格を取ることができたのだ。

ふと、もう今週から最高レベル特訓の授業に参加できるのか？と思い、浜学園に電話した。

すると、１２月からと言われた。

少し恥ずかしい。

私は、この結果を知ったうえで、吾郎を迎えに行った。

車内で吾郎を待つ。

いつも通り、ダッシュで車のもとまで来た。

「ただいまー」元気なあいさつで車内に乗り込む。

すでに、塾から最高レベル特訓の話を聞いているかなと思い、吾郎に聞いてみる。

すると「いや、何も」と言ったことから、まだ知らないのかと分かった。

そこで、「最高レベル特訓とれたよ」と言いながら、公開学力テストの結果を見せると、

「マジで、やったー」

と大喜び。

本人自身も、今回もダメだと思っていたはずである。

吾郎は、結果が表示されたスマホの画面をずっと見ていた。

喜びをかみしめていた。

家に帰り、吾郎の鞄の中を見ると、「最高レベル特訓　算数　受講申込書と書かれたオレンジの紙が入っていた。

この紙を見て、より実感した。

こうして悲願の最高レベル特訓をとることができたのだ。