努力の結末
受験三日目の試験を終えた日の夜。
初日、二日目に受験した最難関中学の合格発表は、すでにされていた。
受験翌日の午後3時ころには、発表されていたが、吾郎の試験の手ごたえのなさから、合格発表を見る気にはならなかった。
かなりの高い確率で不合格だろうし、見てもしかたがないと思っていた。
ただ、3日目の第一志望校の手ごたえがあった様子だったので、気持ちが少し前向きになり、合格発表を見てみよういう気分になった。(安全校の合格発表はすでに見ていた)
当然の結果
吾郎は、受験を終えた解放感から、兄と大笑いをしながら遊んでいる。
私は、吾郎に不合格になったことをわざわざ吾郎に伝える必要もないと思い、一人でスマホを開き合格発表を確認することにした。
まず一つ目の最難関A中学のサイトに行く。(学校名は匿名とします)
ここで【合格発表】と書かれたボタンをクリック。
読み込み画面の後、
——「不合格」——
の表示。
不合格の可能性がかなり高かったので覚悟はしていたが、実際に「不合格」という字を見るとショックだ。
しかも合格最低点に20点も足りていない。
浜学園の合格判定模試で何度か合格を勝ち取ってきた学校だっただけに”今年だけ試験が超難化して、全員手応えがないのでは”と、一途の望みを持っていたが、そうそう甘くはなかった。
吾郎には、この時点で結果を伝えなかった。
合格の瞬間
続いてもう一つの最難関B中学。
こちらも吾郎が試験後、全く手応えなかったと話した学校だ。
またダメだろうと思ってサイトの合格発表というボタンを押した。
……え?
思わず見直した。
何度も見た直した。
【合格】
驚きすぎて「え!吾郎受かってるで」と、普通のテンションで吾郎に言ってしまった。
吾郎も「え!!うそ!!!」と言いながら、急いで駆け寄ってきて覗き込むように私のスマホ画面ををチェック。
一瞬、間があったと、
「うおー!!やったー!!!!」
と言いながら、涙を流した。
私も最初は興奮のためかなんだかよく分からないが、合格という実感が沸かなかったが、ほどなくして、合格を実感できたところで、涙があふれ出た。
合格を確認した吾郎は部屋の片隅へと走る。
部屋の片隅で、涙を流しながら、「うおーーーーー!!!!!」と叫び合格を嚙みしめていた。
ここまで、ゲームや友達と遊ぶことなど、数々の事を犠牲にして闘ってきた。
そして、小学校の、周りの友達にも、受験することを言っている。
色々なプレッシャーの中、最難関中学合格という目標を達成した吾郎は、この上なく喜んだ。
そして私自身も、これまでの人生の中で最高の瞬間を味わえた。
吾郎の兄も祝福した。
吾郎の父も涙を流しながら祝福した。
お祭り騒ぎとなった我が家は、このまま、ご馳走を食べに行った。
不合格の瞬間
翌日。
第一志望校の合格発表。
受験を終えた吾郎は、久しぶりに学校に登校している。
私も吾郎も、すでに最難関B中学に合格している今、どこか落ち着いた気持ちだった。
けれど、やはり心のどこかで第一志望校に合格しているかもと期待していたのも事実だった。
なぜなら、試験後の吾郎が一番手応えを感じていたのが、第一志望校だったからだ。
日中、吾郎が学校に行っている間に、合格発表をネットで確認した。
結果は——「不合格」。
合格最低点に6点足りなかった。
結果を見た私は、当然悔しかった。
時間が経過すれば経過するほど、悔しかった。
夕方、吾郎が帰ってきてから、伝えた。
「吾郎、ダメだったわ」と伝えると。
「いいねん、B校受かっているし」
と言った。
吾郎が、入塾当時からずっと目指していた学校。
不合格を知った吾郎の本心は分からない。
が、最難関中学Bに合格しているという余裕が感じ取れた。
その表情は、どこか晴れやかだった。
悔しさがないわけではないと思う。
でも、自分が目指してきた最難関校の一つに合格し、そして受験を「やり切った」と思えたことが、彼の中で一番大きかったのだと思う。
私は心から「この子は強くなったな」と感じた。
「B中学で新しい友達できるかなぁ」
「ドキドキするー」
そんな未来の話をする吾郎に、私はただ「うんうん」と頷き続けた。
終わりに
「本気で目指し、本気で努力した」中学受験に感謝だ。
時に泣きながらも立ち上がってきた吾郎は、成長した。
入塾当時から一年間Hクラスだった吾郎は第一志望校をずっと目指し続けた。
Hクラスだったにもかかわらず。
しかし、その目標ではなければ、今回が合格した最難関中学への道もなかっただろうと思う。
吾郎の兄の時代から数えて6年間、中学受験に家族全員で取り組んで楽しかった。(子どもは苦しかったかもしれないが・・・・)
吾郎、本当によく頑張った。
そして、あなたの人生は、これからもっともっと広がっていく。
——これにて、我が家の中学受験、完結。
これまで吾郎の受験に関わって遅くまで教えてくれた浜学園の先生、吾郎のメンタルケアも含めて、色々アドバイスをしてくれたお世話係さん、そして、吾郎のライバルであり良き友となった浜学園の同級生、みんなありがとう。


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