新たな戦友
吾郎は、浜学園の新6年生に上がった時から最難関レベル特訓の受講資格を得ていた。
ただ吾郎の通っていた浜学園の教室では、最難関レベル特訓が開校受講できず、 約1時間かかる教室まで、自力で行かなくてはならない。
吾郎は、最高レベル特訓を受けるほどの偏差値を取得できていなかったため、最難関レベル特訓に行くしかなかったのだ。
最難関レベル特訓は、週1日授業がある。
最難関レベル特訓がある日は、電車とバスを乗り継いで、最難関レベル 特訓の開講されている教室まで、一人で通っていた。
帰りは、車で迎えに行っていたが、帰りの車内で授業の様子を聞くと、最初の授業では「友達ができなかった」と話す。
一人で教室に孤立した状態で吾郎を想像すると、親として心苦しくなる。
また次の授業の時も、誰とも話してないと話す。
一時間かけて塾に行って、友達もおらず孤立状態の吾郎になんとか友達ができれば、塾に楽しんでいけるだろうがと思いながら、親として何もしてやれない自分に無力感を感じた。
そして、3回目の授業の時、迎えの車の中で吾郎は「横の席にいた子に話かけた」と言った。
その子の名は「小東君(仮名)」というらしい。
嬉しそうに話す吾郎を見て、一安心する。
その後、4回目の授業、5回目の授業と、友達の輪が広がり、徐々に慣れてきている様子が見て取れた。
いつも通っている教室ではなく、周りは知らない子が多いことから、親としても心配していたが、一月もすれば、友達もできたようだ。
肝心の成績は、クラスで真ん中程度。
ただ、大きな戦友と知り合えたことは、大きな財産となったことは間違いなく、この講座が夏に終了してからも、再会するのである。
トラブル発生
最難関レベル特訓に通っている時、トラブルは発生した。
急に吾郎から私の携帯に電話がかかってきた。
吾郎「電車が遅れていて塾に間に合わない」と泣きそうな声で電話してきた。
何らかのトラブルで電車が止まってしまったのだ。
別の行き方で行かなければならない。
私は吾郎に、別の行き方をLINEで送ることを伝えた。
すぐに乗り換え時間を調べ、LINEで吾郎に送る。
その後、塾に少し遅れる旨を連絡。
しかし、いつも行かない行き方で迷わないかとハラハラドキドキ。
GPSを見ながら順調に向かっていることを確認し、無事塾に到着。
胸をなでおろすとともに、吾郎の成長に目を見張るものがあるなと感じた。
ぎりぎりの受講資格獲得
最難関レベル特訓算数には受講資格がある。
過去3回の公開学力テストで、偏差値56以上を取得することが条件だ。
2月から始まった最難関レベル特訓であるが、いきなり試練を迎える。
2月3月と公開学力テストの結果が56を満たさなかったのだ。
せっかく手に入れた受講資格で、せっかくできた友達を早くも手放す危機に直面した。
私「次56取れないと、最難関レベル特訓行かれへんな」
4月の公開学力テスト前に、吾郎に向けて言った。
吾郎「分かっているし」
こんなことを言っても状況は変わらず、いい方向に向かう可能性は低いと思いつつ、吾郎の危機感を煽り、勉強に集中させる目的で言ったが、吾郎は逆にへそを曲げる。
4月の公開学力テストの直前までそういったやりとりをくり返しながら、公開の日を迎えた。
親は、祈るしかできず、”吾郎できてるかなー”と天から見ているであろう神様に問いかける。
そして、テストが終わり、「どうだった」と吾郎に聞いた。
「国語が難しかった。」
吾郎は、「テストができた」とはあまり言わない。
終わったことだと自分自身に言い聞かせ、なんとか、偏差値56を越えてますようにと神様に祈った。
そして水曜日の夕飯時。
公開学力テストの結果を確認する時間だ。
我が家のiPadで、浜学園のサイトにログインし、成績を見るボタンを押した。
すると、なんとか偏差値56を越えていたのだ。
「ウオー」
家族全員で歓声が上がった。
これで、最難関レベル特訓算数が最後まで受講できることが決まったのだ。
そして、新たな戦友とともに戦っていくことになる。


コメント