模試の朝
11月半ばの日曜日。
少し冷え込んだ朝だったけれど、吾郎はいつも通りの明るいテンションで起きてきた。
「おはよー。今日、ええ天気やな。」
そんなふうに言いながら、食卓の椅子に座ると、いつもどおりだらだらご飯を食べ始めた。
「模試か~。」
彼は口の端をきゅっと上げて笑った。
この時点で、本人を含め誰もが、合格判定を受けれると思っていない。
何故なら、7冠特訓で、まだ一冠しか合格したことがないし、公開学力テストでも偏差値が5以上も足りていないし、一度も公開学力テストでその学校の偏差値より上を取ったことがないからだ。
しかもVからSクラスに落ちたところだ。
クラスに落ちに加えて、不合格だった時のことを考えると、吾郎の気持ちが耐えられるのか親としては心配だった。
不合格判定が出ることを前提に、塾までの車の中で「まあ今日は練習だから。まだ入試まで日があるし」と言いながら、精神的ダメージを和らげるように声掛けする。
そして塾前に着き「いってきます。」と吾郎が闘いの場へ向かった。
合格判定模試は午前中に試験があり、午後から問題の解説。
帰る時に結果が伝えられる。
合格判定!
ダメだと思っていた。
本人でさえもダメだと思っていただろう。
午後6時ころ、塾の側に止めた車に吾郎が帰ってきた。
特段変わった様子がはない。
「おつかれさま」
と声を掛ける。
「うん」
と吾郎が答える。
車を走らせ始めながら「どうだった?」と聞いてみる。
吾郎「合格したよ」
「えーーーーーー!!!」
あまりにもいつもと変わらない吾郎の様子に驚いた。
もっと喜びを表現すると思っていたが、そんなことはなかったからだ。
ただ、内心はすごく喜んでいた。
ここから怒涛のごとく、試験の様子を話し始めた。
しかも、かなり上位での合格だ。
「すごいやん、吾郎!」
驚きと喜びで、私の声も少し震えてしまった。
本人のモチベーションを上げるのにこれ以上ない、結果だった。
これまで無理だと思っていた最難関校が、現実味を帯びてきた瞬間だった。
翌日、吾郎は、塾の先生にも褒められる。
なんと、翌翌週に行われた別の最難関校の志望校判定模試でも、合格判定。
第一志望校に合格できるのではという期待を大いに感じる出来だ。
特に国語が良かった。
国語はトップレベルであった。
あと残り2か月程度。
ここに来て、吾郎がめきめきと力を付けてきたことを感じた。


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