
【第26話】VクラスからSクラスへ転落
「……ああ、やっぱりな。」9月下旬、塾から帰ってきた吾郎は、車の中でこうつぶやいた。VクラスからSクラスへの降格が決まった日だった。その顔に悔しさはあったけれど、どこかホッとしたような、肩の力が抜けたような表情にも見えた。無理もない。二月の新学年開講から、ずっと必死に耐えていたのだ。Vクラスの授業は、想像以上に苛烈だった。先生の話すスピード、扱う問題の難度、容赦ないテストの結果管理――一度遅れれば、次の瞬間には置いていかれる。吾郎にとって、それは毎日が綱渡りのようだった。特に算数が致命的だった。文章題も図形問題も、解説が速すぎて授業中に理解しきれない。